2.人材紹介会社と求職者間でのトラブルについて

2.人材紹介会社と求職者間でのトラブルについて
はじめに

この記事は、「医療職の人材紹介会社の闇」をテーマにしたシリーズの2つ目の記事「2.人材紹介会社と求職者間でのトラブルについて」です。

最初から読み進めることをおすすめします。

 

人材紹介会社を利用した半数が不満や問題を感じた。

前回の記事でも挙げた「医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査集計結果(概要)」では、転職エージェントを利用した求職者に対して、問題や不満があったかを確認したところ、

  • 45.9%が「問題や不満に思ったことは特にない」と回答
  • 残りの54%程度が何らかの不満や問題があった

という結果になっています。

 

半分くらいが何かしらの不満がある・問題があると感じています。

 

転職エージェント利用者の主な不満

主な不満としては、

  • 求人情報として提供されていた情報と実際が異なっていた
  • 求人の応募にあたって、必要な情報提供が十分に得られなかった
  • 求人条件と採用条件が異なっていた

などが多く選択されていました。

 

この時のアンケートでは、転職エージェントへの要望まで聴取しており、「職種や条件などの希望に添った求人を紹介してほしい」と回答する人が5割を超えていました。

この要望は、転職者自身にとっては当たり前の気もしますが、全員の希望を聞いた上で紹介できるわけがありません。

 

転職エージェントは転職させるのが仕事

前述の通り人材紹介会社のビジネルモデルが「転職させた時に収益が出る」となっている以上、騙さないまでも転職を前向きに捉えてもらうような都合の良い事以外は話しません。

 

  • 転職を考え直すような冷静な意見
  • じっくり比較検討するようなアドバイス

こういう、ギリギリで転職を思い止まる可能性のある発言をする事はまずありえません。

 

裏をかえすと「職種や条件などの希望に添った求人を紹介してほしい」という要望を聞いてもらえると思っているなら、この人材紹介ビジネルの中身を全く理解できていないと言えます。

 

転職エージェントは、医療関連情報は無知

まず大前提として、仲介する人間がそもそも医療従事者ではないので、業務内容で転職先を選ぼうと考えている人には一切参考になるようなアドバイスはもらえないと考えておくべきです。

 

転職活動のサポートの仕事をする人であって、医療業界や、医療機関の個別情報に乏しい人達です。

 

転職サポート自体は、医療業界の知識がなくとも、社内のマニュアルを学べば何とかなるので、エージェント暦が長くても医療業界に精通している人と勘違いしないようにしましょう。

 

ブラック病院の求人でも「好条件求人」と謳う

「好条件求人」とか「おすすめ求人」などと無責任な事を言って勧めるのは、人材紹介会社が病院や施設からお金をもらえるからです。

 

さすがに、違法性の高いブラック施設を積極的に紹介する事はないと思いますが、看護師などの専門職側の立場からみて「ブラック病院であるか否か」は正直知ったこっちゃありません。

 

ブラック病院(とされている)求人でも「好条件求人」とか「おすすめ求人」として紹介してきます。

そもそも人材紹介会社の人の方がかなりブラックな働き方をしているので、他人のブラックさを気にしていられない状況で、毎月ノルマに追われています。

 

彼らにとってのブラックな病院というのは、「採用率が低い」とか、「中間マージン(手数料)を払わないこと」です。

人材紹介会社にとっては、求職者は商品であり、病院や施設がお客様です。

(口では両者をお客様と言いますが、お金を支払うのは求人者だけです。)

 

商品(専門職)を販売(紹介)し、その対価をもらっている以上、少なくとも求人者の評価を下げるようなアドバイスをわざわざする事はないです。

 

 

人材紹介会社の都合(収益性)が最優先という真実

無料サポートと謳って、あたかも親切なサービスですが、現状は無料で手に入れた商品(人材)に値段をつけて販売(人材紹介)しているというビジネスモデルです。

求職者の希望よりも、「転職させること」が優先です。

これ自体には違法性はないですが、「商売の一環」という説明は一切なく、「無料サポート」と謳っているところが気になります。

 

転職先候補は、求職者の希望より「採用率」が優先される

その他の要因としては、採用率が高いところに人材を紹介しやすい構造に問題があると考えられます。

 

「人員不足で困っており(離職率が高い)、新しい働き手を探しているけどなかなか応募者がいない」こういう医療機関はとりあえず誰でも良いから採用しよう、、、となれば、結果的に採用率が高くなります。

 

つまり、何かしらの理由で人気がなく、他の看護師が行きたがらない病院は、人材に困っており採用率が高いため紹介される可能性が高いです。

 

人材会社が紹介する求人は、人材会社を頼らざるを得ない医療機関であり、他よりも極端に優れた雇用条件であることは極めて低いです。

むしろ離職率の高いブラック病院の方を優先紹介している可能性すらあります。

 

人が辞める→人員不足→応募が来ない→人材紹介会社を頼る→結果採用率が高い

 

仮にブラック病院であるとしても、余計な事を言って「転職しない」「保留する」という選択をとられると人材会社にとっては収益は上がらないので、「細かく聞かれない限り、都合の良いことしか言わない」となりがちです。

 

転職後にもし、「聞いていた話と全然違う」とクレームが入ったとしても、「では、他のところも面談してみますか?」と提案するだけです。

適当に転職させたらあとは「無視」というエージェントもいるようです。

 

転職エージェントを利用する人は、この点を十分に注意しましょう。

 

人材紹介会社に登録すると転職を急かされる

転職エージェントの実績に応じて報酬が変動する「成果報酬型」は、求人側や求職側の都合よりも、「転職を成功させる事」が優先されがちです。

 

お祝い金をチラつかせたり、強引な流れで面談日程を組まれるケースもあります。

 

求職の申込みの勧奨について、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくありません。

 

平成29年10月16日付で厚生労働省が発行したリーフレット(職業紹介事業者の皆様へ~事業運営のルールが変わります~)には、「求職者等を勧誘するに当たっては、お祝い金等の金銭を支給することは望ましくありません。」と明記されています。

 

実は、転職エージェントには、毎月ノルマがあり高い成績(転職成功数や、転職成功による売上)をおさめると、社内評価が上がり、報酬(年収)も上がります。

求職者の「ゆっくり検討したい」などの要望も置き去りにされやすいのはこのためです。

 

正社員希望の人しか手厚いサポートはない

転職エージェントの収益は、転職後の理論年収から算出されます。

 

一般職の転職エージェントでは、学歴や職歴などのキャリアによって理論年収が変わるため、初期登録時の履歴書情報で「相手にしてもらえない」という状況が起きるようです。

 

医療系の転職サイトの場合は、基本的にその資格を持っていれば問題ないので、一般職の転職エージェントと違い、学歴やキャリアで弾かれるような事はほとんどありません。

では、みんな平等に扱ってもらえるかと言うとそうではありません。

 

例えば、パートタイムなど正社員(常勤)ではない働き方は、理論年収が低いため自ずと収益が下がります。

転職サポートの労力は、正社員だろうとパートだろうと基本的には一緒ですが、もらえる報酬には大きな差が出るので、できるだけパートやバイト希望の対応はしたくありません。

 

結果的に、正社員転職の可能性がないと分かった時点で、転職エージェントのレスポンスが遅くなったり、「今は紹介できそうな求人がありません」などと断って連絡が途絶えるなど、対応が目に見えて悪くなる可能性が十分にあります。

シニア層などは、紹介しても採用してもらえる可能性が低くなるうえ、パートタイムでの希望も多いため、年齢だけで弾かれてしまう可能性は多いにあります。

 

「2.人材紹介会社と求職者間でのトラブルについて」のまとめ

人材紹介会社と求職者間でのトラブルについて説明しました。

根本にあるのは、人材紹介会社のビジネスモデルだと考えています。

一見、とても親切な無料サービスですが、現状は無料で手に入れた商品(人材)に値段をつけて販売(人材紹介)しているというビジネスモデルで、求職者の希望よりも「転職させること」が優先になりがちです。

 

もし、転職エージェントを使用するなら、彼らの立場を考えながら上手に活用してください。

次は、「3.人材紹介会社と求人者間でのトラブルについて」について深堀していきます。

 

 

はじめに:医療職の人材紹介会社の闇・問題点